基本情報の難易度は下がった? IPAの合格率で検算する
調べると「制度改定で簡単になった」「合格率は50%前後」「偏差値49」と出てくる。 でもそれはいつの数字なのか、そもそも偏差値は誰が計算したのか—— 根拠が書かれていないまま結論だけが並んでいることに、引っかかった人向けの記事です。 IPAが毎月公表している統計資料を開いて、実際の数字で確かめました。
結論:一度は下がった。ただし3年連続で戻っている
- 2023年4月の制度改定直後は確かに合格率が上がった。令和5年度は47.1%
- しかしその後は令和6年度 40.8% → 令和7年度 38.3%と低下。令和8年度も4〜6月時点で37.7%
- 「簡単になった・50%前後をキープ」という説明は、制度改定直後の数字で止まっている
- 「偏差値49」はネットで広く引用されているが、算出方法と出どころを示しているものが見当たらない。IPAは偏差値を公表していない
「偏差値49」という数字の扱い方
偏差値は本来、同じテストを受けた集団の中での相対位置を表す指標です。 模試のように「同じ問題を、同じ日に、多数が受ける」前提があってはじめて意味を持ちます。
ところが基本情報は通年CBTで、受験者ごとに異なる問題が出題される試験です。 受ける日も、受ける人の層も、問題そのものも揃っていません。 大学入試の偏差値と同じ意味の数字を計算できる土台がない、というのが実態です。 実際、資格の難易度ランキングとして出回っている偏差値には、母集団も計算式も示されていません。
難易度を測りたいなら、IPAが実際に出している数字に置き換えるほうが確実です。
| 指標 | 何が分かるか | 出どころ |
|---|---|---|
| 偏差値49 | 他資格との序列の"印象"。計算の前提が示されていない | 不明(IPAは公表していない) |
| 合格率 | 受験した人のうち何割が受かったか。年度・月ごとに追える | IPAの統計資料(毎月更新) |
| 受験率 | 申し込んだ人のうち何割が実際に受けに来たか。受験者層の変化が読める | 同上 |
| 出題形式・試験時間 | 他区分と比べたときの負担の違い。改定前後の比較にも使える | IPAの試験区分ページ |
IPAの統計資料で見る合格率の推移
IPAは基本情報の統計資料を毎月公開しています。現行制度(科目A・科目B)が始まった 令和5年度以降を年度合計で並べると、次のようになります。
| 年度 | 応募者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和5年度(2023) | 140,774 | 121,611 | 57,278 | 47.1% |
| 令和6年度(2024) | 157,259 | 133,732 | 54,501 | 40.8% |
| 令和7年度(2025) | 172,217 | 147,186 | 56,370 | 38.3% |
| 令和8年度(4〜6月) | 40,731 | 34,103 | 12,857 | 37.7% |
| 現行制度の累計 | 510,981 | 436,632 | 181,006 | 41.5% |
※IPA「情報処理技術者試験 統計資料(基本情報技術者試験)令和8年6月分」の推移表より。 令和8年度は4月〜6月の3か月分だけの途中経過で、年度合計ではありません。 合格率=合格者数÷受験者数。2026年8月4日時点の公表値です。
月単位で見ると、令和5年度は4月の56.4%から3月の42.0%まで下がっていきました。 新形式の初月が最も高く、そこから水準が下がっていったことになります。
「難易度が下がった」の中身:何が変わったのか
合格率が動いた理由をIPAは公表していません。ただし試験の作りが何が変わったかは公表されています。 「下がった」と言われる根拠はここにあります。
| 項目 | 〜2022年度(旧) | 2023年4月〜(現行) |
|---|---|---|
| 知識問題 | 午前:80問・150分 | 科目A:60問・90分(問題数も時間も削減) |
| 応用問題 | 午後:11問中5問を選択・150分。長文で、プログラミング言語の選択(Java・Pythonなど)を含む | 科目B:20問・100分・全問必須。擬似言語に一本化され小問形式に |
| 実施方式 | 春期・秋期(のちに上期・下期)の一斉試験 | 通年CBTで随時。仕上がってから受けられる |
| 採点 | 素点による採点 | IRT(項目応答理論)にもとづく評価点 |
| 合計試験時間 | 300分 | 190分(IPAの資料で30〜40%の短縮と説明されている) |
実感として効いているのは、おそらく次の2つです。
- 言語選択と長文が消えた:旧・午後で最大の関門だった「どの言語で受けるか」の判断と、その言語の習得が丸ごと不要になりました
- 受験日を自分で選べる:一斉試験では「仕上がっていなくても当日が来る」。通年CBTなら準備ができてから予約できます
逆に、楽になっていないところもはっきりしています。科目Aは問題数が80→60問に減った一方、 時間は150→90分。1問あたりの時間は約1.9分から1.5分に縮んでいます。 「短くなった=楽になった」ではありません。
近い試験と並べると位置が分かる
偏差値で序列を作るより、IPAが書いている対象者像と出題形式を並べたほうが、自分に必要な距離が見えます。
| 試験 | IPAの対象者像(抜粋) | 出題形式 |
|---|---|---|
| ITパスポート | 「職業人及びこれから職業人となる者が備えておくべき、ITに関する共通的な基礎知識をもち……ITを活用していこうとする者」 | 100問・120分・多肢選択式(四肢択一)のみ |
| 基本情報技術者 | 「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」 | 科目A 60問90分(四肢択一)+科目B 20問100分(多肢選択式) |
| 応用情報技術者 | 「ワンランク上のITエンジニア」。高度IT人材としての方向性を確立した者 | 科目A 80問150分(四肢択一)+科目B 11問中5問150分・記述式 |
基本情報とITパスポートの差は「作る側の知識が要るかどうか」、 基本情報と応用情報の差は「選ぶ試験か、書く試験か」です。 偏差値の45・49・65という並びより、この違いのほうが対策に直結します。 3試験のシラバスを数えて範囲がどれだけ重なるかまで踏み込んだものは ITパスポート・応用情報との違い にあります (先にITパスポートを取るか、次に応用情報へ進むかの判断材料)。
で、どれくらいやれば届くのか
令和7年度の合格率38.3%は、受験した人のおよそ5人に2人が受かっている水準です。 落ちる人のほうが多い試験ではありますが、必要なのは満点ではなく 科目A・科目Bとも1,000点満点中600点(基準点)に届くことだけです。
- 必要な勉強時間の目安と逆算 → 何時間で受かる?/勉強時間の逆算
- 基準点までの距離を確かめる → 合格点シミュレーター
- いちばん詰まりやすい科目Bの手当て → 科目Bの解き方/科目Bの過去問は50問だけ
- 科目別にどこで落ちているか(IPAの評価点分布を数えた) → 科目Aは難しい?
※採点はIRTにもとづくため、「正答数◯問=◯点」と単純には決まりません。合格率も勉強時間も目安として使ってください。
まとめ
- 合格率は令和5年度47.1% → 令和6年度40.8% → 令和7年度38.3%と3年連続で低下。令和8年度も4〜6月時点で37.7%
- 「50%前後をキープ」は制度改定直後の数字。今も同じという前提で計画を立てない
- それでも旧制度の令和元年度秋期(28.5%)よりは高い。改定前より易しく、改定直後よりは戻っている
- 「偏差値49」は出どころが確認できない数字。通年CBTで問題が受験者ごとに違う以上、同じ意味では計算できない
- 効いた改定は言語選択と長文の廃止・通年化。一方で科目Aは1問あたり約1.9分→1.5分とむしろ忙しくなっている
よくある質問
合格率が下がっている=問題が難しくなった、ということですか?
そう言い切ることはできません。IPAは合格率が動いた理由を公表していないためです。合格率は「合格者数÷受験者数」なので、問題の難易度だけでなく、受験する人の顔ぶれが変われば動きます。通年で受けられる試験は準備の度合いがばらつきやすく、そこも数字に乗ります。加えて採点はIRT(項目応答理論)にもとづく方式で、問題ごとの難易度差は評価点の算出に織り込まれる建付けです。数字の変化は事実として押さえつつ、原因の断定は避けるのが安全です。
合格率は月ごとに差がありますが、受けるなら"狙い目の月"はありますか?
月による差は実際にあります。たとえば令和8年度は4月が33.4%、5月と6月が40.3%でした。ただしこれを狙い目と考えるのは危険です。CBTは受験者ごとに異なる問題が出題され、採点もIRTにもとづくため、月ごとの数字の差は「その月の問題が易しかった」ことを示すとは限らず、受験した人の層の違いを映している可能性があります。月を選ぶより、自分の仕上がりが基準点に届いてから予約するほうが確実です。
科目A免除を使うと合格率は上がりますか?
IPAの統計資料に免除の有無で分けた合格率は掲載されていないため、数字で比較することはできません。制度上は当日に科目Bだけを受ける形になるので、負担が減るのは確かです。一方で免除には認定講座の受講料が別途かかり、修了認定の有効期間もあります。損得の考え方は科目A免除のガイドに整理しています。
基本情報を飛ばして応用情報を受けるのはありですか?
制度上は受験順の制限がないので可能です。ただし出題形式が別物で、応用情報の科目Bは11問中5問を選ぶ記述式(150分)です。基本情報の科目Bが20問すべて多肢選択式(100分)なのと比べると、書いて答える力が新たに要ります。試験時間も応用情報は科目A・科目Bとも150分で、体力的な負担も違います。まず基本情報で範囲を一周してから進むほうが、遠回りに見えて早いことが多いでしょう。
出典・ご注意
- IPA 統計情報(基本情報技術者試験)|統計資料 令和8年6月分・推移表
- IPA 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 推移表(平成21年度春期以降)
- IPA 出題範囲・シラバス等の変更内容の公表(通年試験化・科目A/科目Bへの変更・IRT採点)
- IPA 基本情報技術者試験(対象者像・出題数・試験時間)
- IPA 応用情報技術者試験(対象者像・出題数・試験時間)
- IPA ITパスポート試験(対象者像・出題数・試験時間)
- IPA 令和3年度上期 基本情報技術者試験について(旧・午前80問150分/午後11問中5問150分)
合格率・応募者数・受験者数・合格者数は2026年8月4日時点でIPA(情報処理推進機構)が公表している統計資料の数値です。令和8年度は4〜6月の途中経過であり、年度合計ではありません。合格率が変動した理由はIPAが公表しておらず、本記事の解釈(受験者層の変化など)は当サイトの見解です。ネット上で流通する「偏差値」は当サイトが確認した範囲でIPAの公表値ではなく、算出根拠を確認できていません。他区分との比較はIPAが公表する対象者像・出題形式にもとづくもので、難易度の優劣を保証するものではありません。最新の制度・統計は必ずIPA公式でご確認ください。
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