基本情報の科目Aは難しい? IPAの評価点分布で確かめた

「科目Aは過去問を回せば取れる。難しいのは科目B」——調べると必ずこう出てきます。 でも実際に受けてみたら科目Aで手応えがなかった、あるいは科目Aで基準点に届かなかった。 言われていることと自分の結果が合わない人のための記事です。 IPAは科目A・科目B別の評価点分布を公表しているので、それを開いて数えました。

結論:科目Bのほうが厳しいのは事実。ただし科目Aも3人に1人が落ちている

この記事の数字の出どころ:IPAは基本情報の 評価点分布(科目A・科目B別の点数帯ごとの人数)を統計情報のページで公開しています。 ただし掲載されるのは最新1か月分だけで、翌月分が出ると前の月は残りません。 本記事は令和8年6月分(2026年7月22日公表)の分を2026/08/12に開いて数えたものです。 1か月分のスナップショットなので、月ごとの揺れはあります。

IPAの評価点分布を数える(令和8年6月分)

評価点は科目A・科目Bとも1,000点満点で、基準点は600点。 両方が600点以上で合格です(試験要綱 Ver.5.5)。 その600点を境に、実際の受験者がどう分かれているかが次の表です。

評価点科目A試験科目B試験
900点〜1,000点 1人 26人
850点〜899点 9人 74人
800点〜849点 56人 173人
750点〜799点 319人 392人
700点〜749点 902人 751人
650点〜699点 1,905人 1,326人
600点〜649点 2,272人 1,790人
550点〜599点 1,407人 1,642人
500点〜549点 847人 1,278人
450点〜499点 437人 994人
400点〜449点 180人 633人
350点〜399点 62人 394人
300点〜349点 26人 211人
0点〜299点 4人 165人
合計8,427人9,849人

※人数はIPAの公表値そのままです(合計はIPAの記載と各階級の合算が一致することを確認しています)。 破線より上が基準点600点をクリアした階級です。 欠席した人には評価点がありません。

この表を600点で切ると、こうなります。

区分科目A試験科目B試験
600点以上(基準点クリア)5,464人(64.8%)4,532人(46.0%)
600点未満2,963人(35.2%)5,317人(54.0%)
合計8,427人9,849人

※割合はIPAの公表値ではなく、当サイトが階級ごとの人数を合算して計算したものです。

科目Bのほうが厳しいというのは、この数字のとおりです。基準点をクリアした割合は 科目A 64.8% に対し科目B 46.0%。「難しいのは科目B」という一般論は正しい。 問題は、そこで話が終わっていることです。科目Aでも35.2%が落ちています。 同じ月の合格率は40.3%(受験者9,849人・合格者3,967人)でした。

科目Aの落ち方は「あと1階級」に集中している

基準点に届かなかった人がどこで止まっているかを見ると、2つの科目はまったく違う形をしています。

基準点に届かなかった人の内訳科目A試験科目B試験
550〜599点(あと1階級) 1,407人=47.5% 1,642人=30.9%
500点以上(あと2階級以内) 2,254人=76.1% 2,920人=54.9%
450点未満(基礎から作り直す水準) 272人=9.2% 1,403人=26.4%

科目Aで落ちた人の76.1%は500点以上、つまり 「まったく歯が立たなかった」のではなくあと少しで届かなかった層です。 科目Bは逆で、落ちた人の26.4%が450点未満に沈んでいます。

ここが「科目Aは簡単」と言われる理由でもあり、受けた人が納得できない理由でもあります。 科目Aは、大崩れはしないかわりに、基準点の手前で止まりやすい試験です。 平均点が低い試験ではなく、600点の壁のすぐ下に人が溜まる試験だと言うほうが実態に近いでしょう。 落ちた人が「全然分からなかった」と感じていないのに落ちる——という食い違いは、この形から来ています。

科目Bを突破しながら科目Aで落ちた人が565人

分布と合格者数を突き合わせると、もう1つ数字が出ます。この月に 科目Bで600点以上を取った人は4,532人いました。 一方で合格者は3,967人です。合格は両方の科目が基準点以上のときだけなので、差の 565人科目Bを超えていながら科目Aで落ちた人ということになります。 科目B突破者の12.5%にあたります。

いちばん苦しいとされる科目Bを乗り越えたのに、「取れて当たり前」と言われる科目Aで不合格になった人が 1か月で565人いる。これが、科目Aを軽く見てはいけない具体的な根拠です。 しかも科目Aの成績は次回に持ち越せません。次回も両方を受け直すことになります (基本情報に落ちたら)。

「過去問道場で9割」が評価点9割にならない

もう1つ、分布から読み取れることがあります。科目Aの高得点帯がとても薄いことです。

  • 科目Aで800点以上:66人=0.8%
  • 科目Bで800点以上:273人=2.8%
  • 科目Aの最上位(900点以上)は1人だけ

「科目Aは過去問演習で9割取れる」という話とこの分布は噛み合いません。理由の候補ははっきりしています。 基本情報の採点はIRT(Item Response Theory:項目応答理論)にもとづくもので、 正答数がそのまま点数になる素点方式ではありません(試験要綱 Ver.5.5)。

つまり「過去問サイトでの正答率90%」と「評価点900点」は別の物差しです。 IPAは正答数と評価点の換算表を公表していないため、手元の正答率から評価点を見積もることはできません。 演習で9割取れているのに本番の手応えが違う、という感覚は、この物差しの違いで説明がつく可能性があります (ただし、IPAは個々の評価点の算出過程を公表していないので、ここは当サイトの解釈です)。 対策としての結論は単純で、「正答率9割だから安全」と考えず、余裕を持たせることに尽きます。

ついでに分かること:受験者の14.4%は科目Aを受けていない

この表にはもう1つ気づきにくい数字があります。同じ月の受験者数は9,849人で、 これは科目B試験の合計人数と一致します。ところが 科目A試験の合計は8,427人で、1,422人少ないのです。

IPAはこの差の内訳を公表していませんが、科目A免除制度の対象者は当日 科目B試験のみを受験します。差の1,422人=受験者の14.4%が、 おおむね免除を使った人にあたるとみるのが自然でしょう(当サイトの推測です)。 科目Aが伸びない人にとっては、この制度が選択肢になりえます。ただし IPAの認定を受けた講座の修了が条件で、社会人が個人で申し込める講座は多くありません (科目A免除(午前免除))。

なぜ「あと1階級」で止まるのか

分布の形は「範囲を一周はしたが、詰め切れていない人が多い」と読めます。思い当たる要因は3つです。

1. 覚える量が多く、1問あたりの時間が短い

IPAのシラバス(Ver.9.2)を数えると、学習項目は399項目あります (科目A・科目B両方の範囲です。数え方は何時間で受かる?に書きました)。 科目Aは60問を90分なので、1問あたり約1.5分。 迷った問題に戻る余裕がほとんどない設計です。 「分かるはずの問題を落とした」が積み重なると、そのまま550〜599点の階級に着地します。

2. 取りやすい分野を取りこぼしている

科目Aは満点を狙う試験ではありません。マネジメント系・ストラテジ系・セキュリティは 用語の暗記で拾いやすい枠で、ここを固めるだけで階級が1つ上がる可能性があります。 分野ごとの優先順位は科目Aの頻出分野に整理しました。 計算問題は捨てるか取るかの判断が要ります(科目Aの計算問題)。

3. 過去問の「使い回し」を当てにしている

IPAは2020〜2022年度の問題を公開していません。年度単位でそろう過去問は2019年度秋期までで、 現行の科目A・科目Bになってからの本番問題はごく一部しか公開されていません。 「過去問と同じ問題が出る」を前提にした対策は、そもそも材料が足りていない可能性があります (過去問は何年分やる?)。

分布から逆算した、いまやること

  1. 自分がどの階級にいるかを確かめる。模試や演習の結果から基準点までの距離を出す → 合格点シミュレーター(「あと何問で合格?」モードあり)。 550〜599点の位置にいるなら、必要なのは勉強法の作り直しではなく取りこぼしの回収です
  2. 暗記で取れる分野から埋める。マネジメント系・ストラテジ系・セキュリティを先に固める → 科目Aの頻出分野セキュリティ練習問題
  3. 正答率9割で安心しない。評価点はIRT(Item Response Theory:項目応答理論)で算出され、素点ではありません。 演習は基準点ぴったりではなく余裕を持った水準まで積む
  4. 科目Bを止めない。科目Bを超えながら科目Aで落ちた人が565人いる一方、 科目Aだけ仕上げても合格にはなりません(成績は持ち越せません) → 科目Bの解き方

まとめ

  1. 令和8年6月分の評価点分布では、科目A受験者8,427人のうち35.2%が基準点600点に届いていない
  2. 科目Bの54.0%よりは低いが、科目Aも3人に1人が落ちている
  3. 科目Aで落ちた人の76.1%は500点以上=「歯が立たない」ではなく「あと少し」で止まっている
  4. 科目Bを突破しながら科目Aで落ちた人が565人。科目Aを軽く見ると同じ位置に来る
  5. 科目Aで800点以上は0.8%。採点はIRT(Item Response Theory:項目応答理論)で正答率=評価点ではない
  6. 評価点分布は最新1か月分しか公開されない。数字を追うなら受験月ごとに見る必要がある

よくある質問

科目Aだけ基準点を超えた場合、その成績は次回に持ち越せますか?

持ち越せません。CBT-Solutionsの案内では、片方の科目だけ基準点を超えても不合格となり、次回試験も科目A試験・科目B試験の両方を受験する必要があると説明されています。「今回は科目Aが取れたから、次は科目Bだけ勉強する」という組み立ては成立しません。再受験の間隔や31日ルールは「基本情報に落ちたら」の記事にまとめています。

科目Aと科目Bは同じ日に受けますか。別の日に分けられますか?

同じ日に連続して受験します。科目A試験(90分)のあと最長10分の休憩をはさみ、続けて科目B試験(100分)を受ける流れです。科目Aだけ先に受けて、後日あらためて科目Bを受ける、という分割はできません。当日の流れは「試験当日の流れ」の記事で時系列に整理しています。

科目Aで基準点に届かなかった場合、科目Bは採点されないのですか?

採点されます。IPAの評価点分布には科目A試験と科目B試験それぞれの人数が掲載されており、片方が基準点未満でももう一方の評価点は算出されています。合格の条件は「各科目の評価点が全て基準点以上」なので、両方の点は分かったうえで合否が決まる形です。

応用情報の科目A(旧・午前)と比べて、基本情報の科目Aは難しいですか?

IPAは試験区分どうしの難易度を数値で比較して公表していないため、断定はできません。分かっているのは形式の違いで、基本情報の科目Aが60問90分、応用情報の科目Aが80問150分です。分類(テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系)は共通ですが、IPAが示す対象者像は応用情報のほうが上位に置かれています。区分ごとの位置づけは「難易度は下がった?」の記事で対象者像と出題形式を並べています。

出典・ご注意

評価点の階級ごとの人数・合計、受験者数・合格者数・合格率は、2026年8月12日時点でIPA(情報処理推進機構)が公表している令和8年6月分の統計資料の数値です。基準点をクリアした割合、落ちた人の内訳、科目Bを突破しながら科目Aで落ちた人数などの割合・差分は、当サイトが公表値から計算したものでIPAの公表値ではありません。評価点はIRT(項目応答理論)にもとづいて算出される値で、正答数(素点)ではありません。IPAは正答数と評価点の換算を公表していないため、演習の正答率から評価点を見積もることはできません。評価点分布は最新1か月分のみが掲載され、月ごとに変動します。1か月分のスナップショットであり、年度全体の傾向を示すものではありません。受験者数と科目A試験の人数の差を科目A免除の利用者とみる解釈は当サイトのもので、IPAは内訳を公表していません。最新の制度・統計は必ずIPA公式でご確認ください。

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