ITパスポート・基本情報・応用情報は何が違う? シラバスを数えて範囲の重なりを出した

「基本情報の前にITパスポートを取ったほうがいいのか」「基本情報のあと応用情報へ進めるのか」。 調べると難易度の比較や合格率の話ばかりで、肝心の 「勉強した内容がどれだけ引き継げるのか」が出てきません。 そこでIPAの3つのシラバスを同じ方法で数えました。 この記事は基本情報を受ける人が順番を決めるための判断材料で、他資格そのものの解説はしません。

結論:範囲はほとんど同じ。違うのは「どこまで求められるか」

いま基本情報を勉強している人へ:結論から言うと、 いまの勉強は無駄になりません。基本情報は新制度でも継続で、 科目A60問90分・科目B20問100分という構成も維持される予定です。 詳しくは 2027年度からどうなるかへ。

「午前」で検索すると噛み合わない理由

まず用語の整理からです。「基本情報 応用情報 午前 違い」で検索する人が多いのですが、 いまはどちらの試験にも「午前」がありません

試験かつての呼び方いまの呼び方
基本情報技術者試験 午前試験/午後試験 科目A試験/科目B試験(2023年4月の通年CBT化から)
応用情報技術者試験 午前試験/午後試験 科目A試験/科目B試験(2026年度のCBT移行に伴う名称変更)
ITパスポート試験 科目の区分が無い(100問・120分の1本勝負)

検索結果が噛み合わないのは、この改称が最近だからです。 基本情報が科目A/科目Bになってから3年以上経つのに対し、 応用情報の改称は2026年度で、まだほとんどの解説記事が追いついていません。 「午前免除」という言い方も同様で、基本情報では科目A免除が現行の名称です (科目A免除(午前免除)とは)。

試験の形はどう違うか

IPAが試験区分のページで公表している内容を並べると、こうなります。

項目ITパスポート基本情報応用情報(2026年度)
実施方式 CBT・随時 CBT・随時 CBT・前期/後期
科目A(知識) 60問/90分 80問/150分
科目B(応用) 20問/100分 11問中5問/150分
出題形式 多肢選択式(四肢択一)・100問/120分 科目A=四肢択一/科目B=多肢選択 科目A=四肢択一/科目B=記述式
いちばん大きい段差はここです。基本情報の科目Bは選択肢から選ぶ形式ですが、 応用情報の科目Bは記述式です。あとで見るとおり範囲は+26項目しか増えないのに、 答え方がまるごと変わります。「範囲が広いから大変」ではなく 「選べる状態と書ける状態は別物」というのが、実際の壁です。

数えた:学習項目は180/399/425

IPAはシラバス(出題範囲の細目)を試験区分ごとにPDFで公開していますが、 項目数の合計は公表していません。そこで3つとも同じ数え方で数えました (2026年8月16日時点)。

試験(シラバス) テクノロジ系マネジメント系ストラテジ系 学習項目の合計
ITパスポート試験(Ver.6.5) 951966 180
基本情報技術者試験(Ver.9.2) 2467479 399
応用情報技術者試験(Ver.7.2) 2667485 425

※IPAの公表値ではなく当サイトの集計です。数え方は 基本情報のシラバスを数えたときと同じで、本文中の「(N)」で始まる見出しを数えています。 この方法で基本情報を数えると246/74/79=399となり、 当サイトが以前に出した399項目と一致しました=3試験を同じものさしで測れています。 項目の重みは均等ではないので、件数の比がそのまま学習量の比になるわけではありません。

骨格は3試験ともまったく同じ

数える前に分かったことのほうが、実は重要でした。 大分類9・中分類23という分類の骨格は、3試験とも同じです。

つまり「範囲が違う」という言い方は、正確ではありません。 扱う分野の地図は同じで、その地図をどこまで細かく塗るかが違うだけです。

基本情報→応用情報は+26項目しか増えない

差分を見ると、増え方にも偏りがあります。

分野基本情報応用情報
テクノロジ系 246 266 +20
マネジメント系 74 74 ±0
ストラテジ系 79 85 +6
合計 399 425 +26

マネジメント系は74項目で完全に同数でした。 プロジェクトマネジメント・サービスマネジメント・システム監査については、 基本情報で覚えたことがそのまま応用情報の範囲になるということです。 増えているのはテクノロジ系(+20)とストラテジ系(+6)だけです。

では何が違うのか:IPAが使っている動詞が違う

範囲がほぼ同じなら、応用情報の難しさはどこから来るのか。 シラバスの各項目には【目標】という欄があり、そこに書かれている語尾が違います。

試験【目標】の数うち「修得し、適用する」を含む
ITパスポート試験 63 0
基本情報技術者試験 96 10
応用情報技術者試験 96 46

基本情報と応用情報は【目標】の数まで96個で同じなのに、 「修得し、適用する」を求めているのは基本情報10個・応用情報46個。 ITパスポートは0個で、ほぼすべてが「理解する」で終わっています。

同じことは、IPAが各試験区分のページに書いている対象者像にも表れています。 並べると、違いはほとんど1語です。

試験IPAが示している位置づけ
ITパスポート ITに関する共通的な基礎知識をもつ者
基本情報 必要な基本的知識・技能をもつ者。上位者の指導の下に役割を果たす
応用情報 必要な応用的知識・技能をもつ者。独力で役割を果たす
「上位者の指導の下に」と「独力で」。この差が、 【目標】の「修得し、適用する」が10個から46個に増える理由であり、 科目Bが選択式から記述式に変わる理由でもあります。 応用情報で問われるのは知らない項目の数ではなく、同じ項目を自分で使えるかです。

先にITパスポートを取るべきか

重なりの数字で判断できます。ITパスポートの学習項目180は基本情報の45.1%ですが、 分野によって重なり方がまったく違います

分野ITパスポート基本情報重なる割合
テクノロジ系 95 246 38.6%
マネジメント系 19 74 25.7%
ストラテジ系 66 79 83.5%

ストラテジ系は83.5%まで重なるのに、 テクノロジ系は38.6%しかありません。 ITパスポートを取っても、基本情報でいちばん量が多いテクノロジ系(246項目)の 6割以上は手つかずのまま残るということです。

こういう人判断
ITの用語がまったく分からず、参考書を開いて止まる 先に取る価値がある。ストラテジ系・マネジメント系の土台がそのまま基本情報の153項目に効く
実務でITに触れている/情報系の学習経験がある 飛ばしてよい。重なるのはもともと得意な側で、テクノロジ系の穴は埋まらない
短期間で「合格した」という実績が要る 選択肢になる。ただし基本情報の代わりにはならないので、目的を混ぜないこと
基本情報に落ちたので切り替えたい 落ちた原因を先に見る。科目Bで落ちているならITパスポートは無関係(基本情報に落ちたら

なお、ITパスポートに受かっても基本情報の試験は免除されません。 基本情報で免除の対象になるのは科目Aだけで、その手段はIPA認定の講座を修了することです (午前免除試験の過去問は何年分?)。

次に応用情報へ進むか

ここまでの数字をまとめると、判断材料は3つです。

  1. 覚え直しはほとんど要らない。範囲は+26項目(+6.5%)で、 マネジメント系は増えない。基本情報の教材はそのまま土台になる
  2. 答え方の練習が新しく要る。科目Bが記述式になるので、 「選べる」から「書ける」へ移す時間が別に必要
  3. 日程の自由度が落ちる。基本情報は随時受けられるが、 2026年度の応用情報は前期・後期という決まった期間の実施

つまり「基本情報に受かった直後の、記憶が残っているうちが最も有利」です。 間が空くと、増えた+26項目ではなく元の399項目のほうを忘れてやり直すことになります。

逆に、いま基本情報の科目Bで苦戦している人は、応用情報を先に考える必要はありません。 科目Bを選択式で解けない段階で記述式に進んでも、詰まる場所が同じだからです。 まずは 科目Bの対策時間科目Bの解き方 をどうぞ。

⚠️ 2027年度から試験制度が変わる予定

「次に何を受けるか」を考えるうえで無視できない話があります。IPAは 2027年度から新試験制度に移行することを予定していると公表しています。 ⚠️ 以下はすべてIPAが「予定」「案」として示している段階で、確定した内容ではありません。

試験2027年度からどうなる予定か
基本情報技術者試験 継続。科目A 60問90分・科目B 20問100分という構成は維持される予定。出題範囲の体系は変わるが、試験で問う知識・技能の範囲そのものに変更はないとされている
応用情報技術者試験 高度試験とあわせて「プロフェッショナルデジタルスキル試験」に大括り化され、 マネジメント/データ・AI/システムの3区分に再編される予定
ITパスポート試験 出題分野をビジネス/テクノロジ/セキュリティ・倫理に再整理する予定
(新設) 「データマネジメント試験(仮称)」を新設する予定

読者にとっての意味は、はっきりしています。

  • 基本情報を勉強している人は、そのまま進んで問題ありません。 継続が示されており、科目A60問90分・科目B20問100分という構成も維持される予定です
  • 応用情報を「いまの形で」受けたいなら、2026年度が現行制度の最後になる予定です。 名前も区分も変わる可能性があるので、受けるかどうかの判断は先送りしにくい
  • ただし「予定」なので、駆け込みを煽る話ではありません。 移行の時期も内容も動きます。判断する前に必ずIPAの最新の公表を見てください

まとめ

  1. 3試験とも大分類9・中分類23の骨格は同じ。基本情報と応用情報は名前も順序も一致
  2. 学習項目は180/399/425。基本情報→応用情報は+26項目(+6.5%)で、マネジメント系は増えない
  3. 違うのは範囲ではなく到達度。「修得し、適用する」を求める目標が10個→46個に増える
  4. ITパスポートは基本情報の45.1%。ただしテクノロジ系は38.6%しか重ならない
  5. 応用情報の実際の壁は範囲ではなく科目Bが記述式になること
  6. 2027年度から制度が変わる予定。基本情報は継続、応用情報は再編される予定

よくある質問

ITパスポートに合格していると、基本情報の試験が一部免除されますか?

免除されません。基本情報で免除の対象になるのは科目A試験で、その手段はIPA認定の講座を受けて修了試験に合格することだけです。ITパスポートや他の民間資格を持っていることが、そのまま本試験の免除につながる制度は用意されていません。ただし認定講座の中には、民間資格の取得によって受講項目の一部を免除する方式のものがあります。これは講座の受講内容が減るという話で、本試験が免除されるわけではありません。

基本情報と応用情報を同じ年に両方受けることはできますか?

制度上は別々の試験なので、両方に申し込むこと自体はできます。ただし2026年度の応用情報はCBT方式の前期・後期という決まった期間での実施で、随時受けられる基本情報とは日程の自由度が違います。両方を並行させると、答え方の違う試験を同時に練習することになるので、順番に受けるほうが現実的です。

基本情報に落ちたので、ITパスポートに切り替えたほうがいいですか?

目的によります。範囲の重なりを見るかぎり、ITパスポートの学習項目は基本情報の半分以下で、とくにテクノロジ系は4割ほどしか重なりません。基本情報で足りなかったのがテクノロジ系の知識だった場合、ITパスポートを取っても直接の穴埋めにはなりにくいということです。一方で、学習を続ける動機として合格をひとつ挟みたい、社内で提出できる資格が早く欲しい、といった目的なら選択肢になります。基本情報のどこで落ちたのかは評価点で分かるので、先にそちらを確認してください。

応用情報の科目Bが記述式だと、対策の方法も変わりますか?

変わります。基本情報の科目Bは選択肢から選ぶ形式なので、答えを書けなくても選べれば正解になりますが、記述式では自分の言葉で書き切る必要があります。同じ範囲を勉強していても、選べる状態と書ける状態は別物です。知識の量ではなく答え方の練習が要る、というのが基本情報から応用情報へ進むときの実際の壁になります。

出典・ご注意

試験時間・出題形式・出題数・対象者像はIPA(情報処理推進機構)が試験区分のページで公表している内容です。学習項目の件数(180/399/425)と分野別の内訳、および【目標】に「修得し、適用する」を含む数は、IPAの公表値ではなく当サイトが3つのシラバスPDFを同じ方法で2026年8月16日に数えた集計です。項目の重みは均等ではないため、件数の比がそのまま学習量や難易度の比になるものではありません。シラバスは改訂されるため、版が上がったら数え直しが必要です。2027年度からの新試験制度についてはIPAが「予定」「案」として公表している段階の内容で、時期・区分・名称とも変更される可能性があります。本記事は基本情報技術者試験を受ける人が学習の順番を判断するための材料であり、他試験の受験可否や合格を保証するものではありません。最新の内容は必ずIPA公式でご確認ください。

最終更新日: